薬機法PRプランナー 松矢英恵のブログ

PR歴14年目のフリーランスPR。新たに薬機法を学んで、2021年10月に薬機法管理者の資格を取得しました!薬機法に強いPRを目指しています。

どこからが薬事法違反? 薬機法で使える表現、使えない表現

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こんにちは。薬機法習得中のPRプランナー松矢英恵です。

前回、「明らか食品」の解説を行いました。その中で、効果効能を謳えるのは米や魚、緑茶等、昔からある一般的な食品のことで、新しく開発した目新しい食品には適用されないとお伝えしました。つまり、サプリメントや健康食品のように、「身体への直接的な効果効能」を訴求することができないということでした。

では、薬機法で違反となる「身体への直接的な効果効能を表す表現」とは具体的にどんなものを指すのでしょうか?分かるような、分からないような、という方も多いのではないでしょうか。
今回は厚労省の通知や過去に違反の事例があった事例を基に、OKやNGの判定方法や、その基準などについてお伝えしていきます。

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薬機法違反となる基準とは?

厚生労働省の通知に記された「医薬品的な効果効能の解釈」の基準

薬機法違反の基準となる、「医薬品的な効果効能の解釈」については、厚生労働省の通知「無承認無許可医薬品の指導取り締まりについて」に記されています。長いですがひとまず流し読みしてみてください。その下に要約をまとめています。

2 医薬品的な効能効果の解釈
その物の容器、包装、添付文書並びにチラシ、パンフレット、刊行物、インターネット等の広告宣伝物あるいは演述によって、次のような効能効果が表示説明されている場合は、医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなす。また、名称、含有成分、製法、起源等の記載説明においてこれと同様な効能効果を標ぼうし又は暗示するものも同様とする。
なお、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第11号の規定に基づき、内閣総理大臣が定める基準に従い、栄養成分の機能の表示をする栄養機能食品(以下「栄養機能食品」という。)にあっては、その表示等を医薬品的な効能効果と判断しないこととして差し支えない。


 (一) 疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
 (例) 糖尿病、高血圧、動脈硬化の人に、胃・十二指腸潰瘍の予防、肝障害・腎障害をなおす、ガンがよくなる、眼病の人のために、便秘がなおる等


 (二) 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
 ただし、栄養補給、健康維持等に関する表現はこの限りでない。
 (例) 疲労回復、強精(強性)強壮、体力増強、食欲増進、老化防止、勉学能力を高める、回春、若返り、精力をつける、新陳代謝を盛んにする、内分泌機能を盛んにする、解毒機能を高める、心臓の働きを高める、血液を浄化する、病気に対する自然治癒能力が増す、胃腸の消化吸収を増す、健胃整腸、病中・病後に、成長促進等


 (三) 医薬品的な効能効果の暗示
 (a) 名称又はキャッチフレーズよりみて暗示するもの
 (例) 延命○○、○○の精(不死源)、○○の精(不老源)、薬○○、不老長寿、百寿の精、漢方秘法、皇漢処方、和漢伝方等
 (b) 含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの
 (例) 体質改善、健胃整腸で知られる○○○○を原料とし、これに有用成分を添加、相乗効果をもつ等
 (c) 製法の説明よりみて暗示するもの
 (例) 本邦の深山高原に自生する植物○○○○を主剤に、△△△、×××等の薬草を独特の製造法(製法特許出願)によって調製したものである。等
 (d) 起源、由来等の説明よりみて暗示するもの
 (例) ○○○という古い自然科学書をみると胃を開き、欝(うつ)を散じ、消化を助け、虫を殺し、痰なども無くなるとある。こうした経験が昔から伝えられたが故に食膳に必ず備えられたものである。等
 (e) 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
 (例) 医学博士○○○○の談
 「昔から赤飯に○○○をかけて食べると癌にかからぬといわれている。
………癌細胞の脂質代謝異常ひいては糖質、蛋白代謝異常と○○○が結びつきはしないかと考えられる。」等 

分かりやすく言い換えると

つまり、「商品の容器やパッケージや説明書、チラシやパンフ、冊子やHPやSNSに、効果効能があると示唆することを書いちゃいけないよ」ということを言っています。さらに、具体的には下記の表現を違反としています。

・商品の名称やキャッチフレーズ、製法、起源などに効果効能を記すこと

・「具体的な病名」を書いたり、「身体が変化する」と匂わせたり、「成分が薬で使われていた由来」などを書くこと

・古い書物に病気に効くと書かれていたことを引用すること

医師や学説などの権威ある人の言葉やデータを借りて効果効能を匂わすこと

 

薬機法違反簡易チェックの手法

「なるほど、大体はわかったけれども、例にあげられている表現がやや古いし、今自分が考えた文章が違反かそうじゃないのかイマイチわからないなぁ。判断は難しそうだ」という方に向けて、チェックポイントをまとめてみました。文章やコピーをチェックする際にご使用いただけます。

※下記は食品(明らか食品ではない目新しい食品、サプリメント、健康食品)に特化しています。化粧品や機械や雑貨等には対応していませんので、ご了承ください。

 

☑「具体的な病名」が書かれていないか?

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まずはじめに、具体的な病気名がかかれていないかチェックすることが大切です。ガンや糖尿病、鬱、血糖値が高めといった具体的病名はもちろんですが、鼻がムズムズする、疲れ目、肩こりがヒドイといった具体的な部位を指した不定愁訴を表す場合も相当します。また、成分が薬で使われていた由来を書くのは、それが事実であってもNGです。

例:糖尿病の方へ、血圧が高い方にもおすすめ、睡眠改善のために、生活習慣病の改善、お腹の調子の改善に、コロナに負けないカラダ作りに、民間伝承で治療に使われていたハーブ等。

 

☑「具体的な体の変化」を示してないか?

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病気や不定愁訴だけではなく、具体的な体の変化を示すこともNGです。頭、目、鼻、口、耳、肩首、内臓、手足、肌、精神まで、体の一部を使った表現をする場合、具体的な体の変化とみなされる可能性がありますので、不用意に使われていないかチェックしましょう。

例:おなかスッキリ、食べれば美肌、若返り効果のあるハーブ、疲れの取れない方に、脂肪燃焼率を高める、〇〇(栄養素など)の吸収を高める、頭スッキリ爽やか、目がクリアに、日焼けを防ぐ、バストアップ等

 

☑病名や体の具体的変化・美容を示唆する「キーワード」を使っていないか?

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その他、過去の厚労省自治体の通知により、薬機法違反とされたキーワードが多々あります。それらの記載がないかチェックしましょう。

例:免疫力、抗酸化、疲労回復、漢方、薬草、有効成分、伝統医学、抗ストレス、アンチエイジング代替医療、食べる薬、美腸、鎮静、デトックス、等。

 

まとめ。簡易チェックはできるけれど、最終的には専門家の意見を

上記の基準でチェックしていけば、とりあえず大きな違反は防げるのと思います。しかし、私も勉強しながら、「これもダメなのか?逆にこれはOKなのか」とびっくりした事例も多々ありました。なので、当然ですがこのツールに当てはまらなかったからといって、違反じゃないと言い切れるわけではありません。なので、最終的には専門家の方に見てもらうというのが賢明ですし、あくまで参考程度に見てみてください。

 

広告表現チェックツール『コノハ』

過去に薬機法違反とされたキーワードは、このブログではごく一部しかご紹介できませんでした。なので、思いもよらなかったキーワードが違反だった!という可能性はあります。そんなときに便利なのがチェックツールです。

free.konohacheck.com

特許取得弁護士監修した、 薬事・景表法チェックツールです。コスメ・健康食品に関する広告文章を自動的にチェックしてくれます。私も使用したことがありますが、資料やページを網羅してチェックできて抜けもれなく調べられるので、とても便利でした。
無料でキーワードツールは、「このキーワードは違反していないかな?」と不安な時に確認するのに便利です。有料版は導入費用等考えると決して安くはないですが、特にメディアを運営する方など、チェックする文量が多い方は導入する価値があるのではないかと思います。

 

守りから攻めの表現に転換するために

薬機法を守ったら、言いたいことが言えないのか?

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薬機法守ったら、何も言えない・・・

違反表現をカットしたら、文章がスカスカになってしまった…「これでは何も言えない。薬機法厳しすぎ(涙)」という印象を抱いた方も多いのではないでしょうか。私自身もそうでした。これを厳密にやったらクライアントさんの売り上げを下げてしまうんじゃないか、口うるさい厄介者が現れたと疎ましく思われるんじゃないかとか、勉強すればするほど相当悩みました。

実際、薬機法のことをよく知らない経営者様からは、「本当に良いものを広めて人様のお役に立とうとしているのになぜ邪魔をするんだ?」と言われたこともあります。(懇切丁寧に1時間じっくり薬機法と違反状態のままPR活動を行うリスクについて説明したらご理解いただけました◎)

私のクライアントさんの商品はおおむね、品質がいい、エビデンスもある、更に自分で健康効果を実感したから人にも自信を持って勧めたい、というものがほとんと。だから自分の言いたい事が法的に言えないというのは相当にショックなことなのです。

 

でも、あきらめないでください!

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私もPRという仕事をやっているので、素敵なこと、素晴らしいことを世の中に広げる活動が大好きですし、いいものはいいと広めてきました。しかしながら、薬機法を守るとそういった広げる活動に大きな制限がかかるのは事実です。すごく悲しいと思いますし、なんだか歯がゆいと思います。でもあきらめるにはまだ早いです。

 

①効果効能訴求には言い換え表現で乗り切る

違反表現があるなら、違反じゃない言い回しに言い換えればいいのです。「身体の部位」に「具体的な作用する」ということが違反のベースになっているので、体の部位を指定せず曖昧に伝えることで、クリアすることができます。例えば、具体的には、以下のような言い換えを行うことができます。


アンチエイジング→若々しさ

・漢方→和漢ハーブ

・免疫力→活性力

・美肌→表情が明るくなった

 

組み合わせて文章を作ると、最初はぼんやりとした表現に戸惑うかもしれませんが、その中で「この表現はお客さんの反応がいい!」、というのも徐々に見えてくるようになります。

 

薬事法有識者会議さんから、「言い換え表現集」も出ています。

https://www.yakujihou.com/dvd/text/1_4.html

 

②効果効能以外の魅力を掘り起こして伝える

こちらは、私がPRプランナーだからならではの考え方かもしれないのですが、「効果効能の訴求にこだわりすぎない」という発想も大切です。前回の記事の最後の方でもお伝えしましたが、効果効能以外にも、商品コンセプト、パッケージデザインを工夫したり、会社の社会貢献活動をアピールしたり、PRしていくアイデアは色々あります。

 

私が一つ素敵だなと思う事例をお伝えします。宅配野菜のOisixさんのミールキット「Purple Carrot」のヴィーガンセットで使われている「時々ヴィーガン生活」というキャッチフレーズです。

www.oisix.com

 

ヴィーガンって流行っているけれど、辛いイメージ。でも時々だったらやってみたいな。海外のブランドだし、写真見るとこんなカラフルで素敵なんだ。これを買ったら憧れてたヘルシーで環境にも優しい素敵な生活できそうだなぁ」

そんな気分になりませんか?直接的な健康効果を謳わずとも健康さをきちんと訴求しつつ、消費者ニーズをつかんだ表現の好例だと思います。

ミールキットそのものは食品のセット商品ですが、そういった「モノ」を売っているのではなく、本質的な部分では「ライフスタイル」を売っているのだと思います。

 

モノ消費からコト消費へ ライフスタイルを売る時代に

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モノ消費からコト消費、SDGsの時代へ

 

マーケティングでもここ5年くらいで、「モノ消費」から「コト消費」に移行してしてきたと言われています。消費者はモノ自体への興味から、「体験」、つまり消費を通じて得られる「ライフスタイル」を買う人が増えているということです。

実は、私が効果効能以外のところにもぜひ目を向けてほしいと何度もお伝えしているのは、コト消費へのシフトに加え、消費者の購買行動が変化しより社会的なものになっているからです。環境問題が深刻化し、差別や格差の問題が世界的に顕在化する中で、各企業はSDGsをはじめとした、社会課題の解決に取り組むようになり、消費者もそういった企業を支持するようになってきています。「効果効能」というのは消費者の購買の基本であるものの個人的なメリットに留まっています。その枠を超え社会に貢献できる、ヘルシーで環境や人、社会にやさしい商品、ライフスタイル自体を変えてくれるもの、そういったものが今求められています。

効果効能を伝えるとともに、「社会」にどんなアプローチができる商品なのか、そんな視点も商品開発やブランディングに是非取り入れてください。「社会」との関わりの構築はPR(パブリック・リレーションズ=社会との関係性)の得意分野です。こういったPRの記事も今後お伝えしていけたらと思います。